雷雨の日に偶然入った美容室。
赤と緑のコントラストに、レトロなインテリア、湿っぽい艶めき。
オープニングの色彩美は、まさにウォン・カーウァイの「花様年華」。
「花様年華」といえば、BTSよりウォン・カーウァイのほうがしっくりくる世代。
懐かしさと共にドはまりしましたが、美術だけでなく色彩で魅せる心理描写も素晴らしかった。
「夏花」における赤と青
まだあどけない少女のようなランとシアオ・ハンの関係が、「ロリ&オジ」に見えなかったのは、本当に恋しているようだったというジェリー・イェンら、キャストの大抜擢だけでなく、優れた演出力にもあり。
ランの燃える上がる情熱と、過去の傷で閉ざされた、シアオ・ハンの氷のような心を表現したという赤と青は、物語のいたるところでの見られました。
ふたりの出会いもただの美容室なのに、どこかノスタルジックで濃艶な魅惑空間。
悪天候で吉日とはいえないのに、雨の日もドラマティックにしてしまうのも、ウォン・カーウァイっぽい。
赤と緑(青)の照明が、恋に落ちる瞬間のふたりを艶めかしく演出。
ランが耳に触れると緊張するちょっとしたエピソードも、美容室での出会いならではで心地よい。
チャリティー展覧会で失いそうになった、中心湖の庭園のシアオ・ハンの肖像画も、赤と青のコントラスト。
ユエンチーとは、恋仲になっていくのかとも思われたけれど、ハン叔父と同じくらいにランに理解ある先輩でした。
この微妙な立ち位置がすごい好きだったけれど、まさかランママとあんなことになるとは。
いろんな意味で、なかなかいないキャラですよね。
ラン母娘カップルのシーンも観てみたかったですね。
シアオ・ハンの姪、チュエンへの誕生日プレゼントのため、忍び込んだ絵画教室のプロジェクター。
青が淡くなり、どんどん赤と混じり合っていくさまは、シアオ・ハンの心をランがとかしているかのよう。
ラン役のシュ・ルオハンは、実際に美術を専攻し絵が上手な女優さん。
チュエンへの贈った美猴王のイラストなんかは、彼女自身が描いていそうですが、シアオ・ハンの肖像画やボディペイント、ネイルアートなど、どこまで関わっていたのかな、なんて考えながら視聴してしまいました。
余談ですが、「ゼロ婚」のイラストも本当にシュ・ルオハンが描いていそうですよね。
オープニングからエンドロール、終盤ではシアオ・ハンを代弁していたようなベタの存在。
ベタもまたランとシアオ・ハンを投影したような赤と青。
映画のようなたっぷり余韻に浸れるエンドロールも美し過ぎました。
ベタについての考察は 別記事 で。
まとめ
監督は、チェン・カイコー、チャン・イーモウらの元で、撮影監督を務めてきたチェン・ジョウフェイ。
絵具と花で愛情表現するランとシアオ・ハンも優美でしたが、赤と青で魅せる映像美も秀逸でした。
「花様年華」もチャウの誘いを断りながらも、チャンの燃え上がる想いを真っ赤なインテリアで代弁していたのが印象的。
やっぱウォン・カーウァイも観なおしたくなる。
画像は豆瓣电影より