中国ドラマ「繁花」の感想(2/2)です
「繁花(2023)」には、これまでの 王家衛 (以下カーウァイ)らしさもいっぱい。
- 色彩のコントラスト
都会の無機質さを表す「青」と、情熱や愛を象徴する「赤」の対比 - スローモーションと残像
手持ちカメラの揺れや、あえてコマ数を落として残像を残す手法(ステッププリント) - 刹那的な瞬間
登場人物たちの寂しさを際立たせる、記憶や時間にまつわる詩的な台詞 - すれ違う愛
深い残り香のような感情を刻む、あと一歩の距離感 - 音楽の魔法
国やジャンルにとらわれない没入感を高める選曲 - スタイリッシュな衣装
時代を超えて愛されるハイセンスなファッション
挙げればキリがないのですが…
わかりやすかったとはえ、繰り返し観るほどに新たな発見がありそう。
とりあえず、1周目で特に印象的だった名場面たち。
真珠のイヤリング事件
やはり印象的だったのは、物語の転機ともなった真珠のイヤリング事件。
同じ男を愛するふたりの微笑ましい交流を、羨ましくも思っていたのですが…
まさかの大惨事に。
阿宝を支えていることに酔いしれていた自分に気付く玲子。
昇進のチャンスを奪われる汪明珠。
梅萍をはじめ、皆の心の闇が表面化。

これまで保たれていた均衡が崩れ、人間関係が瞬く間にリセット。
物語も次のステージへ。
一番の当事者たちは、阿宝の後ろ盾を断ち切るように自立することに…。
愛し方は違えど、ふたりの阿宝に対する愛の大きさを証明する出来事でもありました。
下町の女将っぽい玲子が大好きで、「夜東京」シーンはどれも印象深いのですが…
中でも真珠のイヤリングの仕入伝票をめぐる修羅場は格別。
人情味あふれる葛先生、菱紅、陶陶のすったもんだ。

見栄、嫉妬、羨望、秘恋、だまし…
玲子も含めた4人の人となりが一目でわかる、ブラックユーモアを交えての長回しのやりとりは、惚れ惚れする巧さ。
あれだけ大喧嘩しておきながら、次の瞬間は「夜東京」を救おうとしているメンバーたち。
カーウァイは、腐れ縁の描き方も極上です。
陶陶と芳妹
色彩のコントラストのように、場所や人物でも効果的に使われていた対比。
例えば
- 怜子と汪明珠
- 李李と盧美琳
- 黄河路と進賢路
- 外灘27号と埠頭倉庫 など
阿宝と陶陶もまた対比の関係にあり。

随所に登場する陶陶と芳妹の夫婦仲。
一見仲良しのように見えて、阿宝への羨望もあった陶陶。
陶陶の虚無感を倍増させる、芳妹の顔を見せない演出は「花様年華(2000)」を彷彿。
最後は、醍醐味でもある情熱キスで仲直り。
決して阿宝には超えられない粋な男に…
これまでのカーウァイの手法がギュッと詰まった見応えある夫婦。
最後の仕上げも粋過ぎる…
切手帳リレー

玲子が阿宝に贈った好運符と同じくらい胸を打った切手帳。
上司であり師匠の金花→汪明珠→李李、そして旦那→再び金花へ。
巡り巡って元の鞘におさまる…
運命という名のご縁を示す重要な小道具たち。
こだわりも強く、スタッフが上海の古い切手市場で探したり、イギリスで購入したアンティークの切手帳を組み替えたりして作られた特注品だそう。
阿宝が、玲子からの運を形見離さず胸に潜ませていたのも胸熱でしたが、粋な小道具たちで、対人関係をウェットに仕上げる優美さもたまらない。
さいごに…
パッと浮かんだ胸熱シーンたち。
華やかさだけでなく、都会を生きる人々の浮遊感や孤独を美しく描き出すのも、カーウァイの魅力。
そう、なぜかカーウァイが描くと、誰もが持つ醜い部分も美しく映るから不思議。
高い演技力だけでなく、細部までこだわる小道具の徹底ぶりや、よくできた相関図…
きっと、何度となく観直すたびに唸ることになるであろう…
画像は公式サイト・SNSからお借りしています
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