アン・パンソク to 年下男子

2025年からがんと闘病しながらも、新作を期待せずにはいられなかったアン・パンソク監督。

2026年7月に脳出血で倒れ、8月にはまさかの帰らぬ人に。

チュ・ヨンウ、キム・ソヒョン主演「恋愛博士」の行方が気になりましたが、撮影、編集済みで、これが遺作となってしまったよう。

映画のような映像美と卓越した音楽センスで、年下男子を撮り続けた、大好きなアン・パンソク作品を振り返ってみました。

年下男子もの

密会(2013)

アン監督とはじめて出会った作品ですが、一目で魅了されました。

当時は、キム・ヒエとユ・アインの実年齢19歳差も話題に。

若くてまっすぐなソンジェと、大人の世界で疲弊するヘウォンの、年齢差を感じさせない純愛と再生の記録。

ただの年下男子系というより、仮面夫婦、不倫、財団不正、上流階級のドロドロ…

パク・クネ大統領失脚時は、再び話題になったほど。

生々しいのにどこか上品で、背景で静かに流れる音楽も、芸術財団が舞台だからなのかなとも思っていたけれど…

ストーリーと同じくらいに、音楽から作品づくりがスタートするといってもいいほど、音楽にもこだわるたアン監督だからなんですよね。

繊細さや緊張感など、音楽で細やかな感情表現するイ・ナミョン音楽監督とはゴールデンコンビ。

ソンジェとヘウォンの連弾やら、使用されているクラシック音楽も素敵で、クラシックOSTを購入してしまったほど。

いま聴いても、シューベルトやラフマニノフをはじめ、なかなかの名曲揃い。

よくおごってくれる綺麗なお姉さん(2018)

アン監督といえば、パンヌナ(通称)というほどの代表作。

私にとっても、とても感慨深い作品。

まずは、題名とポスター。

  • 밥 잘 사주는 예쁜 누나(原題)
  • Something in the Rain(英題)
  • よくおごってくれる綺麗なお姉さん(邦題)

原題まんまの長い邦題と、原題と全く異なる英題。

どちらかというと英題寄りのポスターも、なんて粋なんだと。

雨の日もロマンティックに演出するアン監督だけに、公開前からワクワクしかなかった。

そして、キャスティング。

キャスト表にソン・イェジンの名を見つけ、ポスターの後姿が彼女だと知った時の衝撃。

アン監督が撮るというだけで、浮足立ってしまったけれど、隣に写る男子がチョン・へインだと知り、思わず悲鳴を上げたのを思い出す。

なんてラッキーボーイなんだと。

なぜなら「ディア・ブラッド(2015)」の時から、妙に気になる俳優さんだったし、大女優との共演、しかもアン監督に撮ってもらえるなんて、ブレイク間違いなしでしょって。

全くその通りになったし、ちょうど同年代の売れっ子たちの兵役時期と重なっての公開も、本当にラッキーだったと思う。

家族のような存在との恋愛関係のタブーは、とてもリアルな韓国だったし、日本にも通ずるセクハラ、パワハラ問題。

また音楽もカーラ・ブルーニ、ブルース・ウィルス、2NE1など、ウィットに富んでいたのも印象的。

原題のごとく綺麗なお姉さんと、英題のごとく重要なモチーフになっている、雨の日の演出にも唸りっぱなし。

ある春の日に(2019)

「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」の脚本家が、チョン・へインにベタ惚れし再タッグ。

ヒロインは、ソン・イェジンが断りハン・ジミンに。

個人的には、パンヌナのジュニにはちょっと物足りなさを感じていて、同じ主演でリベンジして欲しかったのに、再共演ならずで残念さばかりが募り…

ハン・ジミンも大好きな女優さんだけど、ゆえに没入感はイマイチ。

シングルファーザーの障害が描かれていたはずだけれど、いつもの社会風刺も弱かった印象。

いつものアン組の俳優メンバーに、音楽もレイチェルヤマガタと再タッグ。

ソン・イェジンが欠けたくらいで、パンヌナを越えてもよいくらいの条件。

脚本力が弱過ぎた印象しかなくて、もっとフラットな気持ちで、今一番観返すべき作品なのではないかと思っている。

卒業(2024)

制作発表から「密会」以来のタブー感全開。

元教え子との恋、お受験や塾がテーマなのも「妻の品格(2012)」のニオイがプンプン。

脚本は面白そうだけど、キャスト不安があった。

主演は、パンヌナで注目されたウィ・ハジュンと苦手なチョン・リョウォン。

ウィ・ハジュンってパンヌナでは弟分だったけど、年下男子を観たいってほどでもなかったので…

キャッスティングの残念さもぶっ飛ぶくらい、終わってしまえば見事なアンマジックで、麗しい映像美ばかりが目に焼き付いている。

年下男子もの以外

妻の資格(2012)

「密会」で再タッグを組んだキム・ヒエ主演。

江南のお受験戦争と専業主婦の不倫が描かれた話題作。

「夫婦の世界(2020)」といい、タブー作が多過ぎで、到底見えないんだけど、実生活では2人の息子の母親。

この専業主婦ソレは、不倫なんだけど超純愛。

ドロドロ感薄めで、むしろ可愛いくらい。

相手役のイ・ソンジェも、年齢のわりにはキスシーンが多いイケオジですよね。

アン監督作品の中で、唯一視聴した大人の恋愛ドラマ。

風の便りに聞きましたけど(2015)

「密会」に続き、脚本家チョン・ソンジュと再タッグ。

「密会」と同じく、上流階級が描かれているものの、全く正反対のテイストでブラックユーモアたっぷり。

高校生の妊娠と結婚、しかもエリート家庭の御曹司と庶民の娘の組み合わせ。

クスっとさせられる名場面が沢山あり、若さゆえのまっすぐさと頼りなさがたまらないイ・ジュン。

コ・アソンの姉役でチョイ役なのに存在感アリアリだったコン・スンヨン。

ユ・ジュサンのコミカルぶりや、珍しい全30話中長編なのもあって、特別感がある作品。

交渉の技術(2025)

年下男子の恋愛と共に、家庭や職場など韓国社会のタブーを描くことが多かったアン監督。

キャストが決まった時は、ガッツポーズでイ・ジェフンとユリのちょっと大人の恋愛を期待したけれど、こちらはどちらかというと男くさいM&Aのお仕事ドラマ。

アン組おなじみのオジたちが勢ぞろいなのが、ある意味すごい。

そんな中でも、ゲーム開発者の理系男子の恋愛脳やら、上品に恋愛ネタをぶち込んでくるのも心憎い。

恋愛よりお仕事系に偏っても、アンマジックはすさまじく、最後までグングン引き込まれた。

クリフハンガーエンディングで、続編への期待もあったけれど、アン監督が撮ることはないと思うと残念でならない。

恋愛なしの主人公は初めてだったけれど、銀髪白蛇ジュノのカリスマ性にも拍手。

恋愛博士(2026)

2026年10月5日公開が決定したよう。

完成させてくれてありがとう監督。

遺作となってしまったけれど、ロボット工学研究所の大学院生たちを描く、アン監督の青春ロマンスなんて楽しみですね。

さいごに…

韓国社会を風刺するように、恋愛、家族、お仕事を絶妙なバランスで融合させ、完成度の高い作品を送り出してきたアン・パンソク監督。

上品で美しい映像と音楽で描かれる、濃厚ラブシーンもいつも話題に。

同じ物語でも、どこに重点を置くかで、全く別物に仕上がるけれど、いつも観たい視点から捉えてくれる抜群のセンスも大好きだった。

年下男子もの以外のドロドロしそうなテーマも、思わぬトーンで攻めてきていつも完敗。

温厚そうな人柄も含め、韓国の監督さんの中でも、ホント一二を争うほどに尊敬。

脚本家さんたちとの連続タッグや、イ・ナミョン音楽監督とのゴールデンタッグ。

いつも豊かな作品の仕上がりに、アン組お馴染みの俳優さんや、スタッフの絆の強さも感じずにはいられない。

体調不良ニュースの度に、「監督ならまだまだ撮れる」と信じていただけに、訃報はいまだに信じられず…。

大好きな俳優さんたちは、一度はアン監督に撮って欲しかったのにな…

ソン・イェジンとチョン・へインでも、もう一度撮って欲しかった。

今後も観直すことも多いであろうアン・パンソク作品。

ご冥福をお祈りします。

error: Content is protected !!