2025年からがんと闘病しながらも、新作を期待せずにはいられなかったアン・パンソク監督。
2026年7月に脳出血で倒れ、8月にはまさかの帰らぬ人に。
チュ・ヨンウ、キム・ソヒョン主演「恋愛博士」の行方が気になりましたが、撮影、編集済みで、これが遺作となってしまったよう。
映画のような映像美と卓越した音楽センスで、年下男子を撮り続けた、大好きなアン・パンソク作品を振り返ってみました。
年下男子もの
アン監督とはじめて出会った作品ですが、一目で魅了されました。
当時は、キム・ヒエとユ・アインの実年齢19歳差も話題に。
若くてまっすぐなソンジェと、大人の世界で疲弊するヘウォンの、年齢差を感じさせない純愛と再生の記録。
ただの年下男子系というより、仮面夫婦、不倫、財団不正、上流階級のドロドロ…
パク・クネ大統領失脚時は、再び話題になったほど。
生々しいのにどこか上品で、背景で静かに流れる音楽も、芸術財団が舞台だからなのかなとも思っていたけれど…
ストーリーと同じくらいに、音楽から作品づくりがスタートするといってもいいほど、音楽にもこだわるたアン監督だからなんですよね。
繊細さや緊張感など、音楽で細やかな感情表現するイ・ナミョン音楽監督とはゴールデンコンビ。
ソンジェとヘウォンの連弾やら、使用されているクラシック音楽も素敵で、クラシックOSTを購入してしまったほど。
いま聴いても、シューベルトやラフマニノフをはじめ、なかなかの名曲揃い。
アン監督といえば、パンヌナ(通称)というほどの代表作。
私にとっても、とても感慨深い作品。
まずは、題名とポスター。
- 밥 잘 사주는 예쁜 누나(原題)
- Something in the Rain(英題)
- よくおごってくれる綺麗なお姉さん(邦題)
原題まんまの長い邦題と、原題と全く異なる英題。
どちらかというと英題寄りのポスターも、なんて粋なんだと。
雨の日もロマンティックに演出するアン監督だけに、公開前からワクワクしかなかった。
そして、キャスティング。
キャスト表にソン・イェジンの名を見つけ、ポスターの後姿が彼女だと知った時の衝撃。
アン監督が撮るというだけで、浮足立ってしまったけれど、隣に写る男子がチョン・へインだと知り、思わず悲鳴を上げたのを思い出す。
なんてラッキーボーイなんだと。
なぜなら「ディア・ブラッド(2015)」の時から、妙に気になる俳優さんだったし、大女優との共演、しかもアン監督に撮ってもらえるなんて、ブレイク間違いなしでしょって。
全くその通りになったし、ちょうど同年代の売れっ子たちの兵役時期と重なっての公開も、本当にラッキーだったと思う。
家族のような存在との恋愛関係のタブーは、とてもリアルな韓国だったし、日本にも通ずるセクハラ、パワハラ問題。
また音楽もカーラ・ブルーニ、ブルース・ウィルス、2NE1など、ウィットに富んでいたのも印象的。
原題のごとく綺麗なお姉さんと、英題のごとく重要なモチーフになっている、雨の日の演出にも唸りっぱなし。
「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」の脚本家が、チョン・へインにベタ惚れし再タッグ。
ヒロインは、ソン・イェジンが断りハン・ジミンに。
個人的には、パンヌナのジュニにはちょっと物足りなさを感じていて、同じ主演でリベンジして欲しかったのに、再共演ならずで残念さばかりが募り…
ハン・ジミンも大好きな女優さんだけど、ゆえに没入感はイマイチ。
シングルファーザーの障害が描かれていたはずだけれど、いつもの社会風刺も弱かった印象。
いつものアン組の俳優メンバーに、音楽もレイチェルヤマガタと再タッグ。
ソン・イェジンが欠けたくらいで、パンヌナを越えてもよいくらいの条件。
脚本力が弱過ぎた印象しかなくて、もっとフラットな気持ちで、今一番観返すべき作品なのではないかと思っている。
制作発表から「密会」以来のタブー感全開。
元教え子との恋、お受験や塾がテーマなのも「妻の品格(2012)」のニオイがプンプン。
脚本は面白そうだけど、キャスト不安があった。
主演は、パンヌナで注目されたウィ・ハジュンと苦手なチョン・リョウォン。
ウィ・ハジュンってパンヌナでは弟分だったけど、年下男子を観たいってほどでもなかったので…
キャッスティングの残念さもぶっ飛ぶくらい、終わってしまえば見事なアンマジックで、麗しい映像美ばかりが目に焼き付いている。
年下男子もの以外

「密会」で再タッグを組んだキム・ヒエ主演。
江南のお受験戦争と専業主婦の不倫が描かれた話題作。
「夫婦の世界(2020)」といい、タブー作が多過ぎで、到底見えないんだけど、実生活では2人の息子の母親。
この専業主婦ソレは、不倫なんだけど超純愛。
ドロドロ感薄めで、むしろ可愛いくらい。
相手役のイ・ソンジェも、年齢のわりにはキスシーンが多いイケオジですよね。
アン監督作品の中で、唯一視聴した大人の恋愛ドラマ。

「密会」に続き、脚本家チョン・ソンジュと再タッグ。
「密会」と同じく、上流階級が描かれているものの、全く正反対のテイストでブラックユーモアたっぷり。
高校生の妊娠と結婚、しかもエリート家庭の御曹司と庶民の娘の組み合わせ。
クスっとさせられる名場面が沢山あり、若さゆえのまっすぐさと頼りなさがたまらないイ・ジュン。
コ・アソンの姉役でチョイ役なのに存在感アリアリだったコン・スンヨン。
ユ・ジュサンのコミカルぶりや、珍しい全30話中長編なのもあって、特別感がある作品。

年下男子の恋愛と共に、家庭や職場など韓国社会のタブーを描くことが多かったアン監督。
キャストが決まった時は、ガッツポーズでイ・ジェフンとユリのちょっと大人の恋愛を期待したけれど、こちらはどちらかというと男くさいM&Aのお仕事ドラマ。
アン組おなじみのオジたちが勢ぞろいなのが、ある意味すごい。
そんな中でも、ゲーム開発者の理系男子の恋愛脳やら、上品に恋愛ネタをぶち込んでくるのも心憎い。
恋愛よりお仕事系に偏っても、アンマジックはすさまじく、最後までグングン引き込まれた。
クリフハンガーエンディングで、続編への期待もあったけれど、アン監督が撮ることはないと思うと残念でならない。
恋愛なしの主人公は初めてだったけれど、銀髪白蛇ジュノのカリスマ性にも拍手。

2026年10月5日公開が決定したよう。
完成させてくれてありがとう監督。
遺作となってしまったけれど、ロボット工学研究所の大学院生たちを描く、アン監督の青春ロマンスなんて楽しみですね。
さいごに…
韓国社会を風刺するように、恋愛、家族、お仕事を絶妙なバランスで融合させ、完成度の高い作品を送り出してきたアン・パンソク監督。
上品で美しい映像と音楽で描かれる、濃厚ラブシーンもいつも話題に。
同じ物語でも、どこに重点を置くかで、全く別物に仕上がるけれど、いつも観たい視点から捉えてくれる抜群のセンスも大好きだった。
年下男子もの以外のドロドロしそうなテーマも、思わぬトーンで攻めてきていつも完敗。
温厚そうな人柄も含め、韓国の監督さんの中でも、ホント一二を争うほどに尊敬。
脚本家さんたちとの連続タッグや、イ・ナミョン音楽監督とのゴールデンタッグ。
いつも豊かな作品の仕上がりに、アン組お馴染みの俳優さんや、スタッフの絆の強さも感じずにはいられない。
体調不良ニュースの度に、「監督ならまだまだ撮れる」と信じていただけに、訃報はいまだに信じられず…。
大好きな俳優さんたちは、一度はアン監督に撮って欲しかったのにな…
ソン・イェジンとチョン・へインでも、もう一度撮って欲しかった。
今後も観直すことも多いであろうアン・パンソク作品。
ご冥福をお祈りします。
画像は公式サイト・SNSより
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