『ある春の夜』VS『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』

2019-09-02

初主演で高評価だった「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」に続き、「ある春の夜」でも主演をつとめたチョン・ヘインを中心に、同スタッフで制作されたアン・パンソク演出の2つの作品を比較まとめてみました。

ネタバレ箇所もあるのでご了承下さい。

スタッフ

  ある春の夜 よくおごってくれる綺麗なお姉さん
演出 アン・パンソク
脚本 キム・ウン
音楽監督 イ・ナミョン
OST レイチェル・ヤマガタ/カーラ・ブルーニ
主演 チョン・ヘイン
ハン・ジミン ソン・イェジン

監督、脚本家、音楽監督、OST参加アーティスト、男性主人公とかぶる部分が多いふたつの作品。
アン・パンソク監督は、過去に「妻の資格」「密会」「風の便りに聞きましたけど」でも同じチョン・ソンジュ脚本家とタッグを組み、全く違うテイストの作品を仕上げていますが、今回は脚本家だけでなく参加アーティストなも同じせいか、とても似ている作品に感じられました。

アン・パンソク監督といえば、映像と一体となった音楽にも定評がありますが、2人の女性アーティストによる甘美な歌声が物語を一層盛り上げています。

男性主人公

ある春の夜 よくおごってくれる綺麗なお姉さん
チョン・ヘイン
ユ・ジホ役(薬剤師) ソ・ジュニ役(ゲームクリエイター)

どちらも主演はチョン・ヘイン。
「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」で、彼のファンになったという人も多いと思います。

薬局という限られた空間で堅実に薬剤師として生きていたジホに対し、年下の若さを象徴するような海外勤務も辞さないゲームクリエイターのジュニ。
全く対照的な男性像のようで、女性に対しての誠実さは変わらず、ライバルの前では豹変する姿はお見事。

失うものが少なく女性を守ってあげるジュニと、子供を守るためにどちらかというと守られるジホでしたが、ジホの中にジュニを垣間見る瞬間も多々ありました。

同じスタッフの中で落ち着いて演技している「ある春の夜」と、初主演でどこか肩に力が入っているようにも思えた「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」。

子持ちゆえに自制心、忍耐力が強く平静を装えるジホと、無邪気で若さゆえに焦ってしまったジュニというドラマの設定とリンクするようなチョン・ヘインの演技も見どころです。

女性主人公

ある春の夜 よくおごってくれる綺麗なお姉さん
ハン・ジミン ソン・イェジン
  イ・ジョンイン役 ユン・ジナ役

音楽もはじめからレイチェル・ヤマガタにを想定したというアン・パンソク監督だけに、ソン・イェジンがオファーを断らなければ、主演の2人も同じだった「ある春の夜」。

ジョンインのキャスティングにソワソワしましたが、アン・パンソク作品の雰囲気にぴったりの実力派女優ハン・ジミンが抜擢。
「もしもソン・イェジンだったら」という思いを抱かせることなく、何事にも物怖じせずに真っ正面から立ち向かう狂犬のような強さと、愛犬のような愛くるしさとを合わせ持つ、ハン・ジミンにしか演じられないジョンインを好演していました。

年上なのにどこか頼りなく守ってあげたくなるジナとは対照的に、同年代の中でもはっきり意見を言えるほうのジョンイン。

相手のことを想う気持ちは変わらないですが、気遣い過ぎて本当の気持ちを伝えなられなかったジナと、想いを秘めてはいられなかったジョンイン。

倦怠期が短かったのは、想いをすぐにぶつけ合ったジョンインカップルの方でした。

ストーリー

  ある春の夜 よくおごってくれる綺麗なお姉さん
社会風刺 DV セクハラ・ストーカー
恋愛 彼の後輩である同い年の子持ち男性との恋 家族同然に育った親友の弟との恋

社会のタブーを扱うことの多いアン・パンソク監督ですが、「ある春の夜」ではジョンインの姉がDVを受け、ジョンイン自身も彼ギソクの後輩であるシングルファーザーのジホを好きになってしまいます。
後輩に彼女を奪われ、プライドが傷つけられた元カレに対するジョンインの真摯な対応も見どころの1つになっています。

「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」は、成長した親友の弟と再会し、恋に落ちることからはじまります。
職場ではセクハラ、プライベートでは元カレにストーカー行為を受け、公私ともに疲弊するジナを支えたのがジュニでした。

どちらもプライド高い元カレの執拗な行為に対し、ジホやジュニが真っ向から立ち向かう点は共通。
結婚を意識するお年頃の女性には元カレの存在は不可欠で、彼女の前では決して見せないチョン・ヘインの豹変する怒りには、とっても臨場感がありました。

家族や親友にも秘めたくなるような恋をいつも描くアン・パンソク監督ですが、出世欲や体裁を保とうとする哀れな男性社会、結婚適齢期の女性の現状、親の過剰な重圧など、性別や世代を超えて感情移入せずにはいられないリアリズムがあり、誰もが何かにとらわれて生きている「韓国社会の今」を象徴するような作品に仕上がっています。

キスシーン

アン・パンソク監督といえば濃厚キスシーンでしたが、「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」はキスシーン自体は多いものの、先輩女優相手の初主演やチョン・ヘイン自身の謙虚な性格もあってか、ユ・アインやイ・ジュンのような若さあふれる大胆キスシーンは見られませんでした。

「ある春の夜」では、どちらかというとジョンインからの積極的なキスが多い印象で、ハン・ジミンの愛嬌と力量が際立ち、先輩女優にうまくリードしてもらえていた気がします。

「ある春の夜」では、ジホが抱き上げてジョンインの司書の仕事を手伝うシーン、「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」では、ジナとジュニが再会するシーンや雨の中のデートシーンなど、俳優達にゆだねる長回しの手法により、キス以外でも2人の仲を象徴する印象深いシーンが多々ありました。

家族

家庭の格差も同時に描かれることの多いアン・パンソク作品。

「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」では、家族同然に育ったものの父親は再婚して他に家庭を持ち、娘の嫁ぎ先としては難のあったジュニの家庭。

「ある春の夜」では、クリーニング店を経営しながら、蒸発してしまった息子の彼女の代わりに孫を育て、ひっそりと暮らしてきたジホの家庭。

家族同然の将来性の見込めない年下男子ジュニと、子持ちというだけで一挙に結婚相手候補から除外されるジホ。
どちらも男性側に難があり、プライドが高過ぎる母や父を持つジナやジョンインは、両親に打ち明けることもできず心を痛めました。

親友にも姉妹にも恵まれているジョンインよりも、彼の姉でもある親友へも秘め事にするしかなかったジナのほうが苦しい立場だったかもしれません。

両作品で主演の父親や母親役を演じたオ・マンソクとキル・ヘヨン。
「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」ではジナ、「ある春の日」ではジホの父親役を演じたオ・マンソクは、子供の気持ちを優先する理解ある理想の父親像。
ヒロインの母親役を演じたキル・ヘヨンは、監督と脚本家さんの配慮が感じられる設定で、鬼母と娘に理解ある2つの母親像を見事に演じわけていました。

キム・チャンワンは、どちらもちょっと悪いせつない父親像でした。

  ある春の夜 よくおごってくれる綺麗なお姉さん
キル・ヘヨン ジョンインの母 ジナの母
オ・マンソク ジホの父 ジナの父
キム・ジョンヨン ジホの母 ユン家の隣人
キム・チャンワン ギソクの父 ジュニの父

シーンスティラー

登場シーンは長くはないけれど、どこか気になった3人の女優俳優さん。

1人目は「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」ではジナの弟を演じたウィ・ハジュン。
あきれながらもジュニと一緒にジナを守ってくれたり、鬼母にビシっとひと言申したり、ジナの弟ではありながらユン家の長男らしい男らしさが目を惹きました。
他の作品でのちょい役でも目に入るどこか華のある俳優さん。

2人目は「ある春の夜」でジホの親友を演じた、チョン・ヘインに憧れる新人イム・ヒョンス。
公私ともに先輩であるギソクとジホの間で揺れる微妙な心情を見事に演じきり、今後も楽しみなイケメン俳優です。

そして3人目は両作品に登場する女優チュ・ミンギョン。
「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」ではジナの職場の同僚として、「ある春の夜」ではジョンインの妹として、どちらも常に客観視しヒロインを支えるかっこいい女性を演じていました。

ジナを最後まで支え続けた「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」ラストシーンや、ジョンインにする助言の数々、ジホの息子ウヌに顔の大きさを指摘されるシーンなど、「ある春の夜」でも印象深い名場面が多かったです。
演技の幅が広そうで、今後もアン・パンソク作品の定番になりそうな女優さんです。

キャスト

アン・パンソク作品はキャスティングも見どころのひとつ。
前作と全く違う役どころで、演技の幅の広さを見せつけてくれるおなじみのキャストを見つけるのも、視聴の醍醐味です。

  ある春の夜 よくおごってくれる綺麗なお姉さん
ソ・ジョンヨン ジホの先輩 ジナの上司
チュ・ミンギョン ジョンインの妹 ジナの同僚
イ・チャンフン ジホの親友 ジナの会社営業支援チーム
キム・ジョンテ アナウンサー ジナの会社代表
チョン・ソクチャン アナウンサー ジュニの会社代表
ホ・ジョンド 不動産屋? ジナの見合い相手
イ・ムセン ソインの夫  
キム・ハクソン   コーヒー加盟店オーナー

アン・パンソク作品では、おなじみのソ・ジョンヨンとホ・ジョンド。
かっこいい女性を演じることの多いソ・ジョンヨンですが、上司としても人生の先輩としても、ジナやジホを支える素敵な役どころでした。

個人的には「ある春の夜」のソ・ジョンヨン×キム・ジョンヨン(ジホ母)×キル・ヘヨン(ジョンイン母)の3ショットシーンが印象的でした。

ホ・ジョンドはちょい役気味ですが、「ある春の夜」ではソインの夫シフンの歯科医院新規移転先をお世話する役で登場していました。

面白いなと思ったのは、ジョンインの妹という設定には違和感を感じたジェイン役のチュ・ミンギョンと、チョン・ヘインやイム・ヒョンスと同い年はないだろうの、ジホの親友ヨンジェ役のイ・チャフン。
ジナとジュニの恋愛に特化していた「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」に対し、「ある春の夜」はイ姉妹の恋愛事情も加わり、年齢のわりには落ち着いてしっかりしている老け顔のジェインとヨンジェ、2人の恋には脚本の上手さも感じました。

恋のお相手が姉とは知らずに、無邪気にジュニと恋バナするジナの弟スンホ。
恋愛経験がなさそうなのに妙に男と女のことがわかるヨンジェとヒョンスの会話。

2つの作品はチョン・ヘイン演じるジュニやジホとのブロマンスも見どころでした。

「ある春の夜」のハン・ジミンは素晴らしかったけれど、やはり同スタッフでソン・イェジン×チョン・ヘインによる「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」第2弾も見てみたいなと思いました。

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よくおごってくれる綺麗なお姉さん オリジナル・サウンドトラック One Spring Night (Original Television Soundtrack)

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Posted by fan